企業サイトのリニューアルは「何年ごとが正解」という明確な答えがあるわけではありません。しかし、一般的には 3〜5年周期で大きな改修を行う企業が多く、その背景にはWeb技術の進化やデザインの変化、ユーザー行動の変化があります。
この記事では、企業担当者や経営者がリニューアルを検討するうえで重要な「10の要因」をまとめ、それぞれの具体的な理由を詳しく解説します。
1．デザインが古くなった（時代に合わない）
- 3〜4年でデザインのトレンドは大きく変わる
- 古いデザインは企業イメージを損なう
- UI/UXの基準が年々上がっている
Webデザインのトレンドは非常に早く移り変わります。3〜4年前のデザインであっても、ユーザーから見ると「古い」「更新されていない会社」という印象を与えてしまうことがあります。特に採用サイトやコーポレートサイトでは、ビジュアルが企業の信頼性に直結します。また、現代では「使いやすさ（UX）」が企業価値の一部として評価されるため、古いサイト構造のままでは、見たい情報に辿り着きにくい、スマホで見づらい、ページ速度が遅いといった問題が発生します。こうした視点から、デザインの老朽化はリニューアルを検討すべき重要なサインです。
2．スマホ対応（レスポンシブ）が不十分
- 60〜80％のユーザーがスマホで閲覧
- Googleはモバイルから評価（モバイルファースト）
- 使いにくいサイトは即離脱
最近はPCだけのサイトはあまり見かけなくなってきましたが（淘汰されたか）、現代のWeb利用はスマートフォンが中心です。企業サイトのアクセス解析を確認すると、多くの場合、スマホ比率が60%を超えています。レスポンシブが不完全なサイトでは、文字が小さい、ボタンが押しにくい、レイアウトが崩れるなどの問題が起き、ユーザーはすぐに離脱します。また、Googleは“モバイルファーストインデックス”の導入により、スマホ表示の品質が検索順位に直接影響するようになりました。スマホ対応が弱いサイトは、SEOの観点からも確実に評価が下がります。
3．事業内容やサービス内容が増え、現状と合わない
- 新サービスの追加
- 事業拡大でサイト構造が追いつかない
- 採用情報や会社情報も古いまま
企業は事業が成長するにつれて、取り扱うサービスや実績が増加し、組織体制も変わっていきます。しかしサイトが古いままの場合、「実際の企業像」と「Web上の情報」が一致しなくなり、信頼性を損ねる原因になります。BtoB企業であれば、商談前に必ずサイトを確認されるため、古い情報は信用の低下に直結します。また、採用活動では「最新の姿を表現できていない企業」に応募者が魅力を感じづらく、採用競争で不利になります。サイトは“会社の顔”であるため、現実と齟齬が出た時点でリニューアルのタイミングと言えます。
4．採用強化のため（採用サイトが弱い）
- 応募が集まらない
- 会社の文化・雰囲気を伝えられていない
- 競合が採用サイトに力を入れている
採用市場が活発な今、「採用ページの強化」はリニューアルの大きな目的の一つです。求人を出しても応募が来ない、他社に負けていると感じる企業では、採用サイトの作り込みが不足しているケースが多いです。現代の求職者は“会社を選ぶためにサイトを見る”ため、企業文化、スタッフ紹介、働き方の実例など、リアルな情報が求められます。また、競合企業は採用動画や社員インタビューを積極的に発信し、魅力を視覚的に伝えています。採用市場においてWebは最重要の選択材料のため、採用強化を目的としたリニューアルは非常に効果的です。
5．CMSやサーバー環境が古く、セキュリティに不安がある
- WordPressのバージョンが古い
- PHPが古い
- プラグインが更新されない
- SSL更新が手動で運用されている
システム面の老朽化は最も危険です。古いWordPressやPHPは脆弱性が放置されるため、サイト改ざんやマルウェア感染のリスクが高まります。さらに、プラグインが更新されていなかったり、サーバーのセキュリティ対策が不十分だと、企業の信用問題に発展する可能性があります。特にSSL証明書の管理は「信頼性（T）」の根幹です。SSLが切れたサイトはブラウザに警告が表示され、ユーザーが即離脱するだけでなく、Googleからの評価も大きく低下します。セキュリティ対策は企業サイトの信頼を守るために最優先で見直すべきポイントです。
6．ユーザー行動（UI/UX）が時代に合っていない
- 離脱率が高い
- コンバージョンが低い
- 情報に辿り着けない
アクセス解析を見ると、ユーザーがどのページで離脱しているか、どこに問題があるかがわかります。導線が複雑で目的の情報にたどり着けない、問い合わせがしづらい、ページが遅いといった問題は、UI/UXの改修が必要なサインです。ユーザーの行動データに基づいてサイトを最適化することで、CV率の向上や問い合わせ数の増加が期待できます。
7．ブランドイメージの統一・刷新が必要になった
- ロゴ変更
- ブランド再構築
- 会社方針の刷新
企業のブランド戦略が変わると、それに合わせてサイトも刷新が必要です。ブランドイメージとWebデザインが一致していない場合、企業のメッセージが正しく伝わりません。デザイン刷新は、企業価値を正しく表現する重要なステップです。
8．競合他社との差別化が必要になった
- 競合がサイト強化を進めている
- 情報発信が活発
- 比較されると見劣りする
ユーザーは同業者を比較して選びます。その際、競合他社のサイトが洗練され、事例が充実し、採用やサービス情報が最新化されているのに、自社サイトが昔のままでは選ばれにくくなります。特にBtoB市場ではWebは「信用の入口」であるため、競合との差別化は売上にも影響します。市場環境に合わせてサイトをアップデートすることは、企業戦略の一部です。
9．内部で更新しづらい（運用が属人化）
- 古いCMSで編集が難しい
- 担当者しか更新できない
- ページ追加に時間がかかる
古いCMSや手作りHTMLのままだと、更新作業が属人化し、スピード感のある情報発信ができません。社内で誰でも更新できる環境を作ることは、企業の情報発信力を高めるために重要です。リニューアルで運用しやすい構造に変えることで、情報更新が活性化し、サイトの価値が大幅に向上します。
10．SEO要件やWeb標準の変化に対応できていない
- Core Web Vitals（ページ速度）
- 構造化データ
- 内部リンク設計
- E-E-A-T対策
SEOは数年前とは大きく異なり、現在は「ユーザーの役に立つコンテンツ」だけでなく、サイトの構造や技術面も評価対象になっています。Core Web Vitals（ページ速度、安定性）、構造化データの整備、E-E-A-Tを意識した情報発信など、最新基準に対応する必要があります。古いサイトではこれらを満たすことが難しく、検索順位にも影響するため、リニューアルによって最新のSEO基準に合わせることが求められます。
まとめ
企業サイトのリニューアルは、単なるデザイン変更やページ追加ではなく、「企業としての信頼性をどれだけ正しく表現できているか」を見直す大きな機会です。技術やデザインの進化、ユーザー行動の変化は年々加速しており、公開から3〜5年が過ぎると、意図せず“古さ”や“不便さ”が顕在化し始めます。とくに、スマホ対応の不十分さや UI/UX の問題はユーザー離脱につながり、採用強化や営業活動にも影響する重要なポイントです。また、事業内容が変わっているのにサイトが更新されていない状況は、顧客・求職者・取引先の信頼を損ねる大きな要因になります。
さらに見落とされがちなのが、セキュリティと運用性です。CMSやサーバーの老朽化、SSLの管理不備は、企業の信頼そのものを揺るがします。内部で更新できない仕組みや、競合に見劣りする情報設計も、長期的に見ると企業価値を下げる原因となります。今のサイトが「最新の企業像を正しく伝え」「ユーザーが迷わず使え」「安全に運用できる状態」かどうかを基準に判断することが重要です。
今回の10項目のうち、複数が当てはまる場合は、リニューアルが企業の成長を支える大きな投資になります。サイトは企業の第一印象を決める“デジタルの本社”であり、信頼を獲得する最も強力なツールです。今のサイトが企業の価値を最大限に伝えられているか、一度じっくり見直してみてください。
