WordPress は世界中で最も多く使われている CMS ですが、その柔軟性を支えているのが「プラグイン」の存在です。
しかし 2025 年、脆弱性レポートや世界的なインシデントを振り返ると、WordPress のセキュリティリスクの大部分は『プラグイン起因』であることが明白になりました。
実際、2025年に確認された重大脆弱性の多くは、
- 権限昇格
- 認証バイパス
- 任意コード実行(RCE)
など、サイト乗っ取りに直結するレベルのものばかり。しかも、そのほとんどがプラグイン(またはテーマ)の問題です。
だからこそ今、「プラグインに依存しない WordPress 構築」が重要性を増しています。
本記事では、プラグインの数を極限まで減らしながら、デザイン・機能性・運用性のバランスを保つ Web 制作の方法を、章ごとに詳しく解説します。
第 1 章:まず“何をプラグインに頼らないか”を決める
プラグインを減らすためには、そもそもプラグインを使わずに実装できる範囲を明確にすることが第一歩になります。
- お問い合わせフォーム → 外部フォームサービス / 独自テンプレート
- パンくずリスト → テーマの functions.php で自作
- カード表示 / レイアウト → Gutenberg ブロック
- カスタム投稿タイプ → register_post_type()
- タクソノミー → register_taxonomy()
- SEO meta → テーマ側で出力
- スライダー → Swiper などの CDN+軽い JS をテーマ内に設置
ここで重要なのは、「慣例的にプラグインでやってきたから」という理由で使わないこと。
現代の WordPress(6.9 以降)は、標準機能だけでできることが圧倒的に増えています。
第 2 章:テーマ側を“フレームワーク化”して機能を持たせる
プラグインに頼らない構成を作るには、テーマの拡張性が重要です。
テーマ開発のポイント
- functions.php を「/inc」フォルダなどで細かく分割
- 汎用的な処理(カスタム投稿登録、フック処理、REST API など)はモジュール化
- get_template_part() を使って部品化
- style.css / scripts を Gutenberg 仕様に最適化
目的は、テーマそのものを“軽量フレームワーク”のように扱うこと。
これにより、後から必要な機能が出たとしても、プラグインに頼らずテーマ内で実装できます。
第 3 章:Gutenberg(ブロックエディタ)を最大限活用する
かつてはレイアウト作成のために「スライダー」「ショートコード」「ページビルダー」などのプラグインが必要でした。しかし今は違います。
ブロックエディタでできること
- 多段カラム
- カード型レイアウト
- CTA ボックス
- FAQ セクション
- ボタンデザイン
- アイコン表現(SVG も可)
- ギャラリー・スライド風表現
さらに、必要であれば block.json を使った自作ブロックも容易。
「表現力を強化するためだけのプラグイン」は、もう不要です。
WordPressの未来は、プラグインではなく ブロックベーステーマ(FSE)+自作ブロックによる拡張が中心になります。
第 4 章:プラグインの代わりに“外部サービス”を賢く使う
セキュリティ的に最も安全なのは、WordPress に余分な機能を持たせないことです。
代替に向いているサービス例
- フォーム:Google Forms, form.run, HubSpot
- アクセス解析:Google Tag Manager / GA4
- セキュリティ:サーバー会社の WAF
- 画像圧縮:Cloudflare Polish / TinyPNG API
- CDN:Cloudflare / Fastly
外部サービスはセキュリティ/スケーラビリティが高く、WordPress の脆弱性とは無関係なため、非常に安全です。
第 5 章:ACF に頼らない“構造化”の設計(重要)
ACF(Advanced Custom Fields)は便利ですが、脆弱性が多く、依存すると長期運用で不利です。
ACF を使わずに構造化する方法
- register_meta() を活用
- 投稿画面の UI 改修は自作ブロックで
- カスタム投稿タイプ+タクソノミーで整理
- テーマ側に入力欄を最小限実装
近年の WordPress は ブロックエディタ自体が「入力 UI」として非常に優秀なので、ACF の必要性は急速に低下しています。
第 6 章:セキュリティは“プラグインではなくサーバー+コア”で担保する
セキュリティ系プラグインも、その多くは脆弱性を抱えます。
そのため、以下の方針が理想です。
セキュリティ強化の正攻法
- WordPress 本体は常に最新(6.9 以降)
- 二要素認証は外部サービスで
- ログインページの保護は WAF 側で
- バックアップはサーバー側の自動バックアップ
- ファイル権限とアクセス制限はサーバー設定で
セキュリティは「プラグインを入れるほど安全になる」のではなく、構成をシンプルにして攻撃面を減らすほど安全になります。
第 7 章:それでもプラグインを使うときの“選定基準”
どうしても使わざるを得ない場合は、選び方が命です。
● 最低ラインの判断基準
- 3〜6か月以内に更新されているか
- インストール数が多いか(数万以上)
- 開発元の信頼性があるか(実績重視)
- 脆弱性報告に素早く対応しているか
- 代替手段が本当にないか
2025年の脆弱性動向を見れば、「安易なプラグイン導入が最大のリスク」であることは明らかです。
第 8 章:プラグイン最小構成の WordPress は“長寿命サイト”になる
プラグインを減らすことでサイトは次のように変わります:
- 表示速度が改善し PageSpeed スコアが向上
- 脆弱性リスクが激減
- トラブル時に原因が特定しやすい
- 更新時の互換性問題がほとんど起きない
- 10年単位の長期運用に向く
- クライアントや企業サイトで特に強い
つまり、WordPress の弱点をほぼ潰し、強みだけを残す構成なのです。
まとめ:2025年、WordPress 制作の最適解は“ミニマム構成”である
2025年は WordPress プラグインの深刻な脆弱性が相次ぎ、特に King Addons や Service Finder、W3 Total Cache のような「世界中で使われる大規模プラグイン」での実攻撃が確認されました。
これを踏まえた WordPress 制作の結論は明確です。
プラグインを減らせば減らすほど、WordPress は安全で高速になり、長期運用に強くなる。
そのために必要なのは、
- テーマ側の設計力
- Gutenberg の活用
- 外部サービスの連携
- コア・サーバーによるセキュリティ
という「構造的な運用設計」です。
これらを意識すれば、軽くて強くて安全な WordPress サイトが実現できます。
